第二十六章 おやすみ

部屋の灯りは消えていた。

一葉はベッドの頭板に背をもたせかけ、窓の外の街灯の光がガラス越しに斜めに差し込んで、部屋をうっすらとした灰青色に染めているのを眺めていた。風鈴が窓枠に吊るされたまま、風もなく静かに垂れている——昨夜と同じように、もっとずっと遠い、どこかの場所と同じように。

それからスマートフォンが振動した。反射的に手を伸ばす——画面が点いた。暁弦ではなかった。

楠木宗一郎の暗号化チャンネル、一行だけのメッセージ。「緊急事態です。電話、大丈夫ですか。」

一葉は二秒ほど画面を見つめた。胸の奥で、名前のつかない何かがひっそりと沈んでいった。「かけてください」と返した。

電話が繋が...

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