第二十七章 書頁の亀裂

午前九時三十五分、水無瀬本邸東側別館の勝手口が内側から押し開けられた。

一葉が出てきた。濃紺の細格子柄ロングコートに淡色のタートルネックを合わせ、髪を半分だけまとめ、数本の後れ毛が耳元に落ちている。手には小さな紙袋を提げていた。今朝、連絡を受けてから手早く用意したものだ。明良のために調合した補助養生の処方に必要な薬草のサンプルが入っており、用法を直接説明するつもりだった。

扉を押し開けた瞬間、彼女は足を止めた。

勝手口の外に停まっていたのは黒塗りのセンチュリー、その傍らに立っていたのは暁弦だった。

車を寄越すと、彼はそう言っていたはずだ。

暁弦は車にもたれることなく、まっすぐに立って...

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