第二十九章 竜胆苷

その真鍮の鍵は、まだサイドテーブルの上に置かれたままだった。午後の光が斜めに差し込み、古びた金属の表面に静かな温もりのある色を宿していた。

一葉は頭を下げ、指先で素朴な木箱の縁をそっと撫でていた。

縁の角は歳月に丸く削られ、触れた感触はやわらかく、木材そのものの細やかな木目が指に伝わってきた。

礼を言うでもなく、箱を押し返すでもなく——ただそうして頭を下げたまま、見ているようで、何も見ていないようだった。

暁弦は窓際の椅子に座り、急かすことなく、ただ彼女を見ていた。

やがて一葉は顔を上げ、木箱をそっとサイドテーブルに戻し、落ち着いた声で言った。「薬材の使い方は紙に書いておきました。明...

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