第三十一章 療養院の清算

携帯が机の上で震えたとき、一葉はすでに目を覚ましていた。

昨夜は書類の処理が深夜近くまでかかり、今日は早めに実験データを確認しようと思っていたため、四時間ほどしか眠れないまま夜明け前から机に向かっていた。発信者は藤堂一成だった。彼女は電話に出た。

「一葉さん、」藤堂の声はいつも通り落ち着いていたが、言葉の選び方は精確だった。「昨日の夕方、老夫人のご家族と名乗る方が二名、療養院にいらっしゃいました。戸籍証明書と親族関係の書類をお持ちで、面会を求められました。規定上、ご家族の面会はお断りできませんので、接待室にてお会いしました。ただ、今朝になって、病室への入室を求められ、医療代理授権書の手続き...

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