第三十五章 ハープ

土曜日の朝、詩緒はいつもより一時間早く目を覚ました。

鏡台の前に座り、髪を三度結い直した。一度目は締めすぎて厳めしく見えた。二度目は緩すぎて、改まった感じが薄れた。三度目でようやく落ち着いた——低めにまとめ、数本の後れ毛が耳元に自然に垂れる。無造作に見えて、実は一本一本計算された仕上がりだった。

衣装箪笥から薄灰色の小紋を取り出し、しばらく眺めてから袖を通した。鏡の前でもう一度確かめ、それから荷物を取りに向かった。

箪笥の奥に、一冊の楽譜が挟まっていた。

ネットの教材を見ながら、四ヶ月近く練習してきた《春の海》のハープアレンジ版だった。教材の解説は丁寧で、運指の細部から音色の扱い方まで...

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