第三十八章 桔梗と単葉

「何を言ったの?」

暁弦は横に目をやり、「この店に、譲渡の可能性があるか聞いてみた」と答えた。

一葉は少し止まった。

暁弦は視線を戻し、静かに続けた。「支配人に断られた。」

それ以上は説明せず、ただ茶杯を持ち上げてひと口飲んだ。その表情に、かすかな苦さが一瞬よぎって、すぐに消えた。

一葉は彼を見て、察した。

買い取って、自分に贈ろうとしていた。この店が自分のものだとは知らずに。

胸の奥で、何かがそっと動いた。

彼女は茶杯を手に取り、ひと口飲んで、その話題を静かに手放した。


会計を済ませ、二人は連れ立って店を出た。台階の上に立つと、夜風が初秋の涼しさを運んできた。

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