第四十六章 旧案の影

土曜日、早朝六時四十分。一葉は別館の書斎でパソコンを開き、卓上には青葉実業のデータ表が広げられていた。デスクランプの光が机の中央に低く落ちている。

スマートフォンが振動した。

暗号化されたメッセージだった。送信時刻は午前三時七分——楠木宗一郎。

内容に目を通す。相手は泽木技研と外部関連先に関わる重要ファイルをまとめ上げ、直接手渡ししたいと求めていた。言葉遣いは落ち着いているが、文面にはかすかに押し殺された切迫感が滲んでいた。

午前三時。

一葉はスマートフォンを机に戻し、すぐには返信しなかった。卓上のファイルに「要確認」とマークし、パソコンを閉じて立ち上がり、コートを取りに行った。

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