第五十章 誕生の日

宴の当日、一葉はいつもより三十分早く目を覚ました。

書机の上には、昨夜用意した贈り物が置いてあった。浅い茶色の麻の小袋——宇治の薬園から自ら摘み、低温乾燥させた三種の漢方植材が入っている。竜胆、白芷、菊花。それぞれ細い麻紐で束ね、各材の性状と適した季節を記した手書きの説明書きを添えた。外包みは何もつけず、ただ袋の口を閉じ、素色の綿紐で緩く結んで、一度見てから、鞄にしまった。

階下では、澄乃が小さな磁器の瓶を差し出してきた。昨夜炊いた小豆の汁粉だという。「明良先生はお甘いものがお好きですから、これなら胃にも優しいかと」。一葉は受け取り、小さく頷いた。

十時ちょうど、暁弦の車が別館の門前に止...

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