第五十二章 薬園

まだ薄明かりの朝、別館の廊下は窓の外からときおり掠める鳥の声だけが響く静けさだった。

一葉は玄関で出かけ用のバッグを整えながら、漢方のノートを予備のサンプル袋の下に押し込み、バッグの口をきっちり閉じた。

手際よく動きながら、頭の中ではすでに薬園で確認すべき要点を大まかに整理していた——明良が言及していたあの老齢当帰は生育年数が長く、土壌の保水性を確認する必要がある。それから密集して並ぶ数株の紫蘇の苗は、通風が足りていないかもしれない。

携帯が一度震えた。

メッセージで、着信ではなかった。

画面に表示された名前に一瞬手を止め、親指でロックを解除した:「会社の急用で身動きが取れず、本日同...

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