第五十七章 潜伏と探り合い

翌朝、詩緒はいつもより早く階下に降りた。

リビングの窓際に立ってお茶を飲んでいると、一葉が階段を下りてくるのが目に入った。靴を履き替え、鞄を手に取り、両親に「行ってきます」と一言告げて、玄関の扉を開けて出ていく。迷いのない、無駄のない動作だった。

この光景は、ここ最近の毎朝の定番になっていた。

詩緒はお茶を持ったまま両親の前に腰を下ろし、柔らかな笑みを作った。

「お父様、」と彼女は静かに切り出した。「ずっと考えていたんですけど、私も家のお役に立てることをしたくて。文化推進部門で茶道や華道のプロジェクトをされていると聞きました。長年学んできたことを、少しでもお役に立てればと思って。」

...

ログインして続きを読む