第五十九章 ビルの下で待つ人

退勤前、一葉は今日のことを頭の中で改めて整理した。

桑本の論理的な核心部分には明らかな空白があった――彼は元の方案を理解せず、表面的な構造だけを真似ていた。こういう人間は、追い詰められると予想より早く崩れる。

村上は別の話だ。「検収日」という言葉が落ちた瞬間、彼の顔色が変わるタイミングは、合理的な「知っていた者」の反応より半秒近く早かった。情報を知っていただけの者なら、脅威を理解してから顔色を変える。だが直接関与した者は、キーワードを耳にした瞬間に反応する――その言葉が対応するのは情報ではなく、記憶だからだ。

この手がかりで十分だった。

一葉はバッグのサイドポケットからスマートフォンを...

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