第六十七章 見舞いと別れ

車が松濤の本邸の前に静かに止まった。

一葉が降りると、暁弦は車窓を下げてちらりと彼女を見た。何も言わず、ただ彼女が玄関廊下の前まで歩くのを見届けてから、窓をゆっくりと閉め、車を出した。

タイヤが石畳を踏む音が遠ざかっていくのを耳にしながら、一葉は本邸の扉を押し開けた。

玄関の感応灯が点いた。澄乃が食堂の方から歩いてきた。まだ箸を片手に持っていた。

一葉を見て、澄乃は一瞬立ち止まり、言った。「次男が今日も帰ってきてるの。あなたに会いたいって。」

言いながら、その表情はどこかぎこちなかった。言い過ぎてプレッシャーをかけてしまうのを恐れるように、ただ静かに付け加えた。「律希っていうの。ずっ...

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