第七章 松濤への帰路

車窓の外、港区の夜景がゆっくりと後ろへ流れていった。

街灯が一つ一つ、後ろへ掠めていく。

蒼介は妹の横顔を見て、また口を開いた。

「鷹司暁弦。」

声は重くなかった。でも有無を言わせない静けさがあった。

「さっきの人。」

一葉は振り向かなかった。

視線を車窓から外して、前方に落とした。

「うん。」

「鷹司財閥の当主だ。」蒼介は少し間を置いた。「来歴は大きい、界隈も複雑だ。」

横目で彼女を見た。

「お前は今日戻ってきたばかりだ。ああいう人間に関わるのは急ぐな。」

一葉は静かに応じた。

警戒も、拒絶も、どちらも見せなかった。

ただ、既知の情報を確認しているような、そういう...

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