第七十三章 はじめては、いちばん難しい

拓海の手が千夏の母親の肩を掴み、椅子の背もたれへと押しつけた。

力はそれほど強くなかった。だが、その姿勢そのものが一種の宣言だった——お前には何もできない、と。

千夏が飛び出そうとした瞬間、入口に立っていた仲間が横に体を入れて遮った。

手を出すわけでもなく、ただそこに立って、千夏を見下ろし、口の端に薄く笑みを浮かべた。

その笑い方を、千夏は知っていた。子どもの頃からずっと見てきた。あの笑顔を見るたび、膝が抜けて、喉が詰まって、何も言えなくなる。

彼女はその場に立ち尽くし、手を握りしめた。前へも出られず、後ろへも退けず。

一葉はバッグからスマートフォンを取り出し、録画を起動して、テー...

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