第七十八章 光風霽月

夏は執務室から出てきた。有村が半歩後ろについている。

廊下を通りかかった同僚が何人か、足を緩めた。

佐藤が壁際に寄りかかり、湯呑みを手に持って、いかにも気軽な様子で立っていた。だがその位置は、夏が通らざるを得ない角にぴったり合っていた。

「企画、選ばれたんだって?」声のトーンは前より柔らかく、「心配してあげている」という溜め息がにじんでいた。「社長は優しいから、見込みのある若手を引き上げたくなるんだろう。でも優しさと判断力は別物だ。一次審査で落とされたら、自分の顔だけじゃなく、会社の看板まで傷つくんだぞ。」

「佐藤先輩。」

夏の声が、彼の言葉を断ち切った。うつむかず、佐藤をまっすぐに...

ログインして続きを読む