第八十六章 目覚め

「いりません」という言葉が食堂に響いた瞬間、ガラスのグラスが砕ける音よりも鋭く、もう取り消せなかった。

惟道と澄乃が同時に動きを止め、二人とも詩緒を見た。

詩緒は自分が取り乱したことに気づき、すぐに深く息を吸い、口角を引き上げ、先ほどより半音低い声で言った。「すみません、急に少し眩暈がして……最近、あまり眠れていなくて。」

惟道の視線は、まだ彼女の首筋の隠しきれない赤みの上に留まったまま、すぐには外れなかった。

彼はただ静かに、もう一度繰り返した。「アレルギー、それとも睡眠不足?」

二つの言葉。前後矛盾したまま、彼はそれをただ並べて置いた。評することもなく、評する必要もなく。

詩緒...

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