第6章
山田と名乗った白髪の老人は、古い木の杖を片手に、しかし足取りは確かだった。
厳かな、それでいてどこか神秘的な雰囲気をまとい、彼は神社の中へと進んでくる。その腕には、赤い布に丁重に包まれた長方形の何かが抱えられていた。
「千夏様。もしやと思い、あるものをお持ちいたしました」
山田はそう言うと、抱えていた包みを本殿の机にそっと置き、ゆっくりと赤い布を解いていく。
現れたのは、一冊の古びた和綴じの本だった。
表紙には精巧な狐の意匠が彫り込まれている。背表紙はところどころ裂け、黄ばんだ料紙の端は使い込まれて丸まっていた。
「これは和泉家に代々伝わる古文書でございます。当神社...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章

10. 第10章

11. 第11章


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