第33章

一ノ瀬律がスマホを見つめたままぼんやりしていると、耳元にこの上なく穏やかな声が響いた。

「一ノ瀬社長、何をそんなに呆けているんだい?」

現れたのは、背筋がすっと伸びた優雅な男だった。歩き姿は落ち着き払っており、玉のように温和で、端正かつ謙虚な空気をまとっている。

一ノ瀬律の持つ攻撃的な美貌とは異なり、彼の目鼻立ちは涼やかで、気高くも清らかだ。ひと目見ただけで好感を抱かずにはいられない。

「来たか」

一ノ瀬律はスマホを置き、長い脚を無造作にデスクへ投げ出した。仕立てのいいスーツのパンツが、その完璧な脚のラインを際立たせている。

橘柊一はふと視線を落とし、スマホの画面に表示された『フ...

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