第34章

国内で唯一販売されたリムジン。その華麗で尊大な車体も、トランクに積まれた高級な手土産の山も、持ち主の並外れた地位を物語っていた。

車内の空気は凍りついている。

相沢千尋は車に乗り込んでからずっと目を閉じ、一ノ瀬律と言葉を交わす気など毛頭ないようだった。

一ノ瀬律は冷ややかな目元をしており、鼻筋に乗った金縁の眼鏡が、彼の近寄りがたい気品をいっそう際立たせている。

相沢千尋は心の中で毒づいた。冷酷無比な狼のくせに、眼鏡なんかかけて禁欲的な大社長を気取ってんじゃないわよ。

「本家に着いたら、何を言うべきで何を言うべきでないか、分かっているな」

一ノ瀬律は顔を上げ、警告を含んだ声で相沢千...

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