第50章

空には分厚い鈍色の雲が低く垂れ込め、吹き抜ける風にすら、じっとりとした重苦しさが混じっている。

相沢千尋は市役所の入り口に静かに佇み、灰色の靄に包まれた遠くの街並みを見つめていた。その手のひらは、すっかり冷え切っている。

結局、こうするしかないのだ。

一ノ瀬律との、この泥沼のような関係にはもううんざりだった。お祖父様の体調を気遣ってここまで引き延ばしてきたが、もう限界だ。これ以上、こんな日々を続ける気はない。

たとえ事後にお祖父様へ詫びることになろうとも、今日こそ絶対に離婚届を提出する。

千尋は心の中で固く決意し、市役所の階段の脇に寄りかかって静かにその時を待った。

どんよりとし...

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