第55章

クラブ・ミューズ。

一ノ瀬律は、同年代の御曹司たちと集まっていた。

ダンスフロアでは妖しいネオンが瞬き、着飾った若い男女が持て余した熱を振り払うかのように、狂ったように踊り狂っている。

だが、一ノ瀬律の横顔は冷ややかで、彼の前にはグラスに入った水が一杯置かれているだけだった。

相沢エリカも同席していたが、その美しい顔はひどく沈んでいた。彼女の視線は、探るように何度も律へと向けられている。

しかし、彼から話しかけてくる気配は一向にない。苛立ちを募らせた彼女は、一人で黙々と酒をあおるしかなかった。

「藤井翔」

律が不意に口を開いた。

友人たちの中でダイスカップを振っていた一人が、...

ログインして続きを読む