第56章
個室の中は、水を打ったように静まり返っていた。
先ほどまで馬鹿騒ぎをしていた若い御曹司たちも、ただならぬ空気を敏感に察知し、すっかりふざけた態度を引っ込めている。
照明の下、一ノ瀬律の彫りの深い横顔に薄い光が落ちている。顔の半分は暗がりの中に沈み、その表情は読み取れない。長い指をソファの背に軽く添えたその姿には、どこか冷ややかな無関心さが漂っていた。
「お前は、どういう立場で俺にそれを聞いてるんだ?」
橘柊一は片眉を上げ、真剣な口調で答えた。
「もちろん、彼女を想う男としてだ」
一瞬の間のあと、彼はさらに続ける。
「そして、お前の親友としてな」
結局、一ノ瀬律がその問いに答え...
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