第76章

一ノ瀬家の本邸は、和やかな空気に包まれていた。

相沢千尋は、祖父のために養生の薬膳を整えているところだった。

そこへ執事が恭しく入室してくる。

「大旦那様、表にお客様が見えております。なんでも……」

彼は相沢千尋へちらりと視線を向けた。

「若奥様の、養父だと名乗っておられます」

氷雪のように透き通った気高い若奥様に、あのような薄汚れた養父がいるなど、彼には到底信じがたいことだった。

一ノ瀬源造は一瞬きょとんとしたが、すぐに顔をほころばせた。

「それは素晴らしい! 千尋の養父君なら、早くお通ししなさい」

彼は相沢千尋へ顔を向ける。

「千尋や、今までそんな養父君がいるとは一言...

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