第4章 お嬢様、どうか冷静に

空ちゃんは突然目を覚ました。

「ママ?」

真っ暗な部屋は、がらんとしていた。

空ちゃんはベッドから降り、部屋中を探したが、林田ナナの姿は見当たらない。彼は階段を降りて、月明かりの中、建物の入口に落ちていた林田ナナのヘアピンを見つけて拾い上げた。不吉な予感が胸の中に湧き上がってきた。

大変なことが起きた、ママが誘拐されたんだ!

佐藤邸、書斎。

窓の外は雨が絶え間なく降り続いていた。

佐藤光は窓際に立ち、墨色の短髪が風に乱されても、その端正な容姿は少しも損なわれなかった。

雪玉のように可愛らしい子供がぬいぐるみを抱き、かわいい小さなスーツを着て、茫然と男の背中を見つめていた。

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