第41章 この男はいったい何者

林田ナナは食い入るように見つめながら拳を握りしめた。「やれやれ!つかみ合いしろ!」

傍らでは、空も星の目をキラキラさせて興奮していた。「殴れ殴れ!喧嘩しろ!」

母子揃って典型的な見物好き、しかも事が大きくなればなるほど面白がるタイプだった。

佐藤光は林田ナナをもう一度見やった。彼女は薄化粧で、上品な瞳が潤んでいて、興奮で頬を赤らめている小さな顔が、どこか可愛らしく見えた。

可愛い……

なぜ自分がそんな言葉を思いついたのか?

我に返った彼は、寒も拳を握りしめ、キラキラと目を輝かせながら見物組に加わっているのを見た。

林田寧々はバッグをしっかりと抱きしめ、まるで誰かに奪われるのを恐...

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