第45章 裏切ったことがない

林田ナナは言った。「きっと仕事で何か嫌なことがあったのでしょう」

村上黙は分析した。「佐藤社長の機嫌を損ねるようなことと言えば、おそらく寒くんのことでしょうね」

彼は社長の側近として、佐藤光の会社での様子を誰よりも知っていた。

名利の場では、この男はいつも綿密に計算し、血の気の多い性格で、どんな事態に直面しても手段は冷酷かつ果断、決して優柔不断にならず、一刀両断、きっぱりと物事を処理する。

ただ寒くんのことになると、まったく手も足も出なくなるのだ。

寒は手を振った。

パパが怒っているのは絶対に自分とは関係ない。

最近はずっと良い子にしていたのだから。

村上黙は小声でつぶやいた...

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