番外 淳一郎

パーティー会場のすべてが、まるで時が止まったかのようだった。

私は苗美が優雅にお辞儀をし、そして皆が驚愕する視線の中を平然と去っていくのを見つめ、頭の中が真っ白になった。

「淳一郎、離婚しましょう」

彼女の声は、まるで明日の天気を話すかのように穏やかで、涙も、ヒステリーも、怒りの色さえ微塵もなかった。

桐山慧がいつの間にか私の隣に立ち、硬直した私の手からその離婚届を受け取った。

「苗美はもう署名した」

彼の声は低かった。

「君がサインすれば、すべて終わる」

私は機械的に書類に目を落とす。苗美の署名は、彼女自身のように優しく、そして揺るぎない、秀麗で丁寧な文字だった...

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