第148章 飛ぶのが低すぎるぞ

そのあと千葉晴美は、傷口のあたりがひんやりして心地いいことに気づいた。痛みはまるでない。古宮桐也の手つきも、驚くほど軽い。

薬を塗るのに時間がかかったのか、それとも動きがあまりに丁寧だったのか――晴美はいつの間にか、うとうとと眠りに落ちていた。

翌朝、目を覚ますと足の傷はきれいに処置されていて、塗られていた軟膏もほとんど吸収されている。昨日ほど痛くない。たしかに、楽になっていた。

無意識に隣へ手を伸ばす。まだ体温が残っている。彼も起きたばかりなのだろう。

起き上がってクローゼットへ向かい、服を取ろうとしたところで、昨夜ハンガーに掛けておいたスーツ一式が消えていることに気づいた。

―...

ログインして続きを読む