第200章 氷の鬼上司が笑った

千葉晴美が研究所に足を踏み入れると、当然のように辻原学の姿が目に入った。彼が引退していなければ、いまごろ医学界で引く手あまたの存在だったはずだ。

入ってすぐ、晴美は満面の笑みで声をかける。

「辻原じいさん」

辻原学が晴美に会うのは久しぶりだった。それでも彼は、来てくれないか、顔を見せてくれないかと、日々ずっと気にかけていた。

とりわけ、医学の知識や学術的な議論を交わす時間が彼は好きだった。晴美が投げてくる問いは鋭く、そこから導かれる結論はいつだって彼の予想を軽々と越えてくる。驚かされるのは、いつも彼のほうだ。

千葉晴美という人材は、辻原学が医師として長年生きてきて、そうそう巡り会え...

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