第56章 俺の妻に手を出すとは

その話し方、どう聞いても皮肉めいているな。

古宮冬樹がそれを聞き取れないはずがない。彼は前に進み、痩せて背の高い姿で千葉晴美の横に立った。彼女より随分背が高いのに、そんな優越感は微塵も感じさせない。

「兄嫁さんは兄さんに本当に優しいんですね。こんな良い薬があるなんて私も知らなかった。兄嫁さんは単なる素人レベルじゃないでしょう?医学界にかつて天才がいたと聞きました。女性で、漢方や鍼灸に詳しく、若くして医学界の模範になったとか」

千葉晴美はスプーンで鍋の中の薬をかき混ぜながら、平静な口調で返した。

「ええ、聞いたことあります。確かに凄い方ですね。私の憧れの人ですよ。でも私みたいな...

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