第57章 この薬には少し副作用がある

しかし、この部屋の雰囲気はどこか妙だった。

実際、想像するのは難しくない。先ほどのことで古宮桐也が怒っているのだろう。この古宮冬樹が彼の目の前で横取りしようとしたのだから、誰だって怒るはずだ。

いつも高慢で冷淡な古宮桐也がこんなにも露骨に嫉妬するなんて意外だった。先ほどの彼の険しい顔を思い出すと、思わず笑みがこぼれる。

千葉晴美は薬を持って古宮桐也の側に歩み寄った。

「まずこれを飲んで」

古宮桐也が少し顔を向けた。

「これが朝早くから辻原家まで取りに行った薬か?」

千葉晴美は素直に認めた。

「うん、この薬はとても貴重なんだけど、あなたの足にはとても効くわ。早...

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