第83章 夫はとても私を可愛がってくれる

古宮桐也は身をひねってひらりとかわすと、同時に千葉晴美の手首をつかみ、きゅっと眉を寄せた。

「おまえ、なんでそんなに警戒心が強いんだよ」

不意打ちを食らうのは、これが初めてではない。

まだ二十代そこそこ。本来なら、いちばん無邪気でいていい年頃のはずだ。なのに彼女の目には、彼にも読み切れない何かが、静かに澱んでいるように見えた。

直感が告げていた。

車津はきっと、千葉晴美のことを最後まで洗えていない。少なくとも、こちらの知らない部分がまだ山ほどある。

書類なら人をだませる。

だが、その人間の身のこなしや反応、そして目だけは、ごまかしきれない。

そこでようやく、千葉晴美も相手が古...

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