第89章 厄介な荷物

古宮桐也の顔からすっと温度が消えた。さっきまで千葉晴美に向けていた柔らかさなど、もう欠片もない。声もひどく陰っている。

「誰の許しを得て、彼女に話した?」

車津は頭を深く垂れた。

「ただいま、当該プラットフォームに連絡を入れます」

千葉晴美が古宮桐也のオフィスを出た途端、白い顔からは作り物めいた従順さが一瞬で剥がれ落ちた。いつもの冷えた表情に戻り、唇の端に皮肉な笑みが浮かぶ。

自分の口から情報を引き出そうなんて、百年早い。

互いに腹の内くらい、とっくにわかっている。まだその薄皮を破る時じゃない――それだけのことだ。古宮桐也も、彼女が芝居を打っていたと見抜いている。何度も探りを入れ...

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