第107章 罠にかかる

西園寺琴音が目を覚ます頃には、窓外はすでに白々とした光に満ちていた。

彼女は僅かに疼くこめかみを指で揉みほぐす。昨夜はどういうわけか泥のように眠り、夢ひとつ見なかったことに気づいた。

これほど深く眠れたのはいつ以来だろうか。澱のように溜まっていた連日の疲労が、あらかた消え去ったように感じる。

意識がはっきりしてくると、西園寺琴音は視線を巡らせた。病室には彼女一人しかいない。

窓際の椅子は空っぽだ。陸奥司の姿はどこにもなかった。

一瞬、意識が遠のく。昨夜の陸奥司の言葉が脳裏をよぎった。

だが、今はその姿がない。彼女は自嘲気味に口元を歪めた。意外ではなかった。

陸奥司の約束など、所...

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