第156章 兄から離れて

少し迷ったが、結局彼女は通話ボタンを押した。

電話の向こうで二秒ほどの沈黙があり、すぐに少し高飛車な女性の声が響いた。

「西園寺琴音? 私よ、陸奥愛理」

陸奥愛理?

陸奥司の妹で、幼い頃から甘やかされ、長年海外で留学生活を送っているあの愛理か?

一体なぜ、急に電話などを?

西園寺琴音の脳裏に、瞬時にそれらの情報が駆け巡る。

陸奥司との結婚生活中、この義妹との接触は片手で数えるほどしかなかった。

「ええ、そうだけど」

西園寺琴音の声は波のない水面のように静かだった。

「何か用?」

「帰国したの」

陸奥愛理の口調は簡潔だった。

「ちょっと話したいことがあるわ。明日の朝十...

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