第161章 我が身を捧げる

手術室の外は、恐ろしいほどの静寂に包まれていた。

西園寺琴音は壁に背を預け、恐怖の余韻で小刻みに震える体を抱きしめていた。

手術室へ運び込まれる際の稲崎秀信の蒼白な顔、そして胸元に広がっていた鮮烈な朱色が、瞼の裏に焼き付いて離れない。

あの子供も救急処置室へ運ばれ、今は全身の精密検査を受けているはずだ。

不意に、骨張った手が視界に入り、温かい水の入った紙コップが差し出された。

琴音が顔を上げると、そこには陸奥司が立っていた。

コートを脱ぎ、濃紺のシャツ一枚になった彼の肩は逞しいが、眉間には隠しきれない疲労の色が滲んでいる。

「水を飲め」

低く響くその声は、伽藍とした廊下によく...

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