第163章 当時の出来事

西園寺琴音は少し呆気にとられ、首を横に振った。

「いえ、心当たりはありません。ここに来たのは初めてですから」

「いや、まさか……本当にどこかで見たことが……」

子供の母親はブツブツと呟き、琴音の顔を食い入るように見つめながら、記憶の糸を手繰り寄せているようだ。

突然、彼女はハッとしたようにカッと目を見開き、信じられないという表情を浮かべた。

「あなた……もしかして、西園寺さん?」

その声は、微かに震えていた。

西園寺琴音は胸がざわついたが、素直に頷いた。

「はい、西園寺琴音です」

「西園寺琴音……西園寺……」

子供の母親はその名前を何度も口の中で反芻し、やがてその瞳が興奮...

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