第168章 記憶喪失

どれほどの時間が経ったのだろう。西園寺琴音は、重たい瞼をゆっくりと押し上げた。

白い天井、白い壁。鼻をつくのは、消毒液特有の冷ややかな臭い。

ここは……病院?

呆然と瞬きをし、焦点を合わせようとするが、意識の底は真っ白なままだ。

私は誰? なぜここにいるの?

ズキズキとした鈍痛が頭の奥で鳴り響く。何かが頭蓋骨を内側から叩いているようだ。

無意識にこめかみを押さえようと手を持ち上げる。だが、手首から伸びるチューブに動きを阻まれた。透明な液体が、一滴、また一滴と血管へ送り込まれている。

「目が覚めたか」

冷徹な男の声。

琴音は視線を巡らせ、病室の入り口に立つ二人の男を認めた。黒...

ログインして続きを読む