第209章 君から彼女の香水の匂いがする

西園寺琴音は寝室へ戻り、身支度を済ませると広々としたベッドに身を横たえた。

心は、自分でも驚くほど凪いでいた。

さざ波ひとつ立っていない。

陸奥司がまたしても彼女を選んだことに対して、琴音は心の底から慣れきってしまったのだ。失望することさえ、もはや無駄に思えるほどに。

鉛のような疲労がすぐに身体を蝕み、彼女は瞼を閉じた。それからどれほど経っただろうか。おそらくは深夜、深い眠りの淵に沈んでいた頃だ。

微睡みの中で、隣のマットが重みで沈み込む気配を感じた。外気を含んだ冷たい空気が流れ込んでくる。

直後、逞しい腕が腰に回り、背中に温かい体温がぴったりと寄り添ってきた。

琴音は弾かれた...

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