第220章 厄介者

彼は殴りかかりたいという衝動をぐっと押し殺し、ギリギリの理性を保って冷徹な仮面を維持したまま、言い捨てるように告げた。

「稲崎秀信、お前のその小細工が通用すると思うなよ」

言い終わるや否や、彼は踵を返してエレベーターホールへと大股で歩き去った。その背中は、強張ってはいたが、決然としていた。

エレベーターの扉が閉まる音が微かに響き、廊下はようやく静寂を取り戻す。

マンションのドアの内側で、西園寺琴音は扉に背中を預け、外の気配が完全に消えたのを確認してから、ようやく安堵の息を吐き出した。

ズキズキと痛むこめかみを指先で揉みほぐすが、心身にのしかかる疲労は消えない。

二日酔いの気だるさ...

ログインして続きを読む