第231章 彼女はなぜここに

「全力を尽くしますので、ご安心ください」

 医師は慰めるような眼差しを向け、看護師たちを連れて立ち去った。

 廊下に再び静寂が戻る。

 西園寺琴音は冷たい壁に背中を預け、崩れ落ちるようにベンチへ座り込んだ。

 うつむき、両手で顔をしっかり覆う。細い肩が小刻みに震え、指の隙間から押し殺した嗚咽が漏れ出した。

 稲崎秀信は傍らに立ち、ただ黙って彼女を見つめていた。

 彼は安易な慰めの言葉はかけなかった。

 静かに歩み寄り、彼女の隣に腰を下ろすと、そっと手を伸ばして肩を抱き寄せ、その頭を自分の肩へと預けさせた。

「泣きたい時は泣けばいい。我慢しなくていいんだ」

 彼の声には、不思...

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