第235章 神秘的な男

手を洗い終えて戻ってきた真夏は、母親が涙をぬぐっているのを目撃し、すぐさま駆け寄った。小さな両腕で西園寺琴音の足に抱きつく。

「ママ、泣かないで。おばあちゃんも泣かないで。真夏が面白い話をしてあげる!」

その幼く無邪気な言葉が、病室に漂っていた感傷を吹き飛ばした。

西園寺琴音は娘を抱き上げると、その小さな頬にキスをした。そして、ベッドの上から二人を優しい眼差しで見つめる母へと視線を移す。かつてないほどの充足感が、胸の奥を満たしていた。

午後、真夏はベッドサイドの小さなテーブルに突っ伏して、カラーペンで絵を描いていた。時折顔を上げては、作品を祖母に見せている。

一条真理はベッドの背も...

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