第240章 以前とは少し違う

西園寺琴音はその場に立ち尽くし、母が再びノートを開く姿を見つめていた。照明に照らし出されたその横顔は、あまりにも他人のように冷ややかだった。

ふと、幼い頃の記憶が蘇る。

母が研究に没頭している時も、決まってこの鋭い集中力を見せていた。

当時の琴音は、いつも忍び足でお茶を机の端に置き、音もなく部屋を出たものだ。

母の仕事の邪魔をすることは、許されないと知っていたから。

今、その立場は逆転してしまったようだ。

秘密を抱えているのは自分であり、母の方が蚊帳の外に置かれている。

「お母さん」

西園寺琴音は恐る恐る尋ねた。

「それだけ長く見ていて……何か思い出しましたか?」

一条真...

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