第241章 何かを探しているようだ

稲崎秀信は少し間を置き、慎重に言葉を選んだ。

「記憶喪失は確かに人を変えてしまう。彼女はまだ環境に慣れていないだけかもしれないよ」

「ただ慣れていないだけじゃないわ」

西園寺琴音は首を横に振った。

「昔のお母さんはもっと人当たりが良くて、あんな風に……冷淡じゃなかった」

昨夜、ノートを見せろと執拗に迫ってきたことや、今日の稲崎秀信に対する余所余所しい態度、そして丁寧な振る舞いの裏に隠された苛立ちを思い出す。

そのすべてが、彼女の記憶にある優しく芯の強い母親の姿とはあまりにもかけ離れていた。

「本当に記憶喪失による性格の変化なの?」

西園寺琴音は、誰にともなく呟いた。

稲崎秀...

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