第269章 衆矢の的

誰もいない部屋を見つめているうち、彼女の瞳に理性の光が戻っていく。

やはり、あの偽者は逃げたのだ。

足早に書斎へ戻り、飾ってある絵の裏から小型監視カメラを取り出す。

機器をパソコンに接続し、すぐさま録画データを呼び出した。

モニターの中の偽の一条真理は、大半の時間を静かに、そして戸惑っているかのように過ごしていた。

夕暮れ時になるまでは。

実験室の祝賀パーティーが始まるおよそ二時間前、映像の中の偽の一条真理が突然ソファから立ち上がった。

そして、持ち歩いていた古びたハンドバッグの底から、旧型の携帯電話を取り出したのだ。

西園寺琴音の瞳孔がキュッと収縮する。

それは、西園寺琴...

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