第282章 またしても稲崎秀信

ドアを押し開けると、聞き慣れた計器の微かな稼働音が顔に吹きかかった。

忙しそうに立ち働いていた同僚たちが顔を上げ、彼女の姿を認めると、一様に微妙な表情を浮かべる。

彼女は挨拶もそこそこに、久しぶりの自分の実験台へと向かい、手荷物を置くと、手慣れた様子で手袋をはめた。

その流れるような一連の動作は、まるで彼女が一日たりともここを離れていなかったかのようだ。

「西園寺先生。こちらがご不在の間の、プロジェクトチームのデータ集計と実験の進捗記録です」

プロジェクトチームのリーダーが歩み寄り、分厚いファイルの束を彼女のデスクに置きながら、事務的な口調で言った。

「ありがとうございます」

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