第290章 サプライズ

彼は低い声で運転手に命じた。

車が発進し、行き交う車の波へと合流していく。

車内はゆったりとしているものの、息が詰まるほどの重苦しい空気が漂っていた。

西園寺琴音は自分側の窓にぴったりと張り付き、陸奥司との距離を最大限に取っていた。

反対側に背を預ける陸奥司の視線は、彼女の強張った背中に落ちている。

彼はしばしの沈黙のあと、言葉を選ぶようにようやく口を開いた。

「昨日の七海の件は、あいつに代わって謝るよ」

窓の外を飛ぶように流れる街の景色から目を逸らさず、西園寺琴音は陸奥司の乾いた謝罪を聞いても、まばたき一つしなかった。

ただただ皮肉に感じられ、苛立ちばかりが募っていく。

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