第83章 データ消失

西園寺琴音は彼を一瞥することさえ拒むように、一人壁際に立ち尽くしていた。胸の奥は、とっくに懊悩で満たされている。

どれほどの時間が過ぎただろうか。司の母もようやく静まり返ったものの、時折琴音に突き刺すような氷の視線を投げてくることはやめなかった。

時間は一分一秒と残酷に過ぎ去り、窓の外の空色は次第に沈殿していく。

司の母も疲れが出たのか、長椅子に背を預けて閉目していた。

それを見た二階堂瑠璃が歩み寄り、何かを優しく囁く。司の母は渋々といった様子で頷くと、瑠璃に腕を支えられ、先に病院を後にした。

ガランとした廊下に、西園寺琴音ただ一人が取り残された。

静寂が無限に膨張していく。彼女...

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