第87章 乗車

だが、彼女の心はむしろ冷たく凪いでいた。ここまで言い切るからには、彼の背後にいる黒幕の力は想像を絶するものなのだろう。

もしかすると……母を襲ったあの事件に関わった資本とも、繋がりがあるのかもしれない。

ワクチンのため、そして母のためにも、ここで退くわけにはいかない。

そう決意した瞬間、彼女の瞳に氷のような冷徹な光が宿った。

「富山室長、よくお考えになったほうがよろしいかと。これ以上過ちを重ねるなら、あなたも、あなたの後ろにいる人間も、今夜の発言の代償を支払うことになります」

氷の刃のような彼女の言葉は、富山室長の心に残っていた最後の希望を粉々に打ち砕いた。

目の前の女は、自分の...

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