第98章 母は構わなくていいと言う

彼の言葉がまだ宙に漂っているうちに、その体はすでにドアの方を向いていた。

ほぼ同時に、真夏と七海は西園寺琴音の手を勢いよく振りほどき、迷うことなく陸奥司の元へ駆け寄った。

「瑠璃お姉ちゃん?」

真夏の小さな顔は恐怖で歪んでいた。先ほど西園寺琴音の怪我を見た時とは比べものにならないほど、その動揺は激しい。

「パパ! 瑠璃お姉ちゃんどうしたの? 血、いっぱ出ちゃった? 死んじゃうの? 早く会いに行こうよ!」

七海もすぐに続く。西園寺琴音にあげるはずだった飴が床に転がった。

普段はお菓子に目がない彼が、今は見向きもしない。その心は電話の向こう側にあった。

「パパ! 早くして! 瑠璃お...

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